女性のワクチン接種について 〜妊娠可能年齢の女性とその周囲の方々へ〜

女性のワクチン接種について

 妊娠可能年齢の女性とその周囲の方々へ 

 

皆さんこんにちは。
わかまつ呼吸器内科クリニック院長の若松です。

 

2022年となってもオミクロン株によるコロナ禍が続いています。

今年も新型コロナウイルス感染症との闘いが続きそうです。

 

どうしてもコロナワクチンに意識が向きがちですが、

そんな中で日本プライマリ・ケア連合学会誌に女性へのワクチン啓蒙の記事が載っていました。

著者は亀田ファミリークリニックの管長麗依先生です。

この記事を読み、この内容は皆さんと共有すべきだと考え私なりにまとめて記載してみました。

参考にして頂ければ幸いです。

 

今回は女性のワクチンと記載していますが、妊娠可能年齢の女性及び妊婦さんが対象となっています。

しかしその周囲の方々にも大切な内容となっています。

皆さん何となくお分かりだと思いますが、

まず妊婦さんは感染症に対する抵抗力が弱く重症化しやすい側面があります。

また感染症による胎児への影響も心配となります。

 

具体的に見てゆきましょう。

この記事では以下の病気について予防を推奨しています。

 

 

① 風疹(三日はしか)
風疹は子供が感染した時には比較的症状が軽いために三日はしかなどとも呼ばれています。

しかし免疫のない成人が感染すると発熱や発疹、

関節痛などが酷く苦労することもあります(軽症〜重症までありえる)。

しかも特効薬はありません。

さらに恐ろしい事は、風疹に対する免疫が不十分な妊婦さんが風疹にかかると

胎児に障害が発生する事が分かっています(先天性風疹症候群)。

 

② 麻疹(はしか)
感染症の中でも感染力や重症度から言っても最強クラスのウイルスです。

子供も大人も命に関わる感染症です。

しかも特効薬はありません。本当に恐ろしい感染症です。

 

③ 水痘(みずぼうそう)
全身に水疱を伴う皮疹が出ることで有名ですね。

免疫力のない大人が感染すると重症化する事が知られています。

このウイルスは一旦感染すると体内にウイルスが潜伏し

成人や高齢者の免疫力が低下した時に帯状疱疹を起こすことでも有名です。

さらに恐ろしい事は、妊婦さんが水痘にかかると母子共に危険な状態になったり、

胎児に障害が出ることが分かっています(先天性水痘症候群)。

 

④ ムンプス(おたふくかぜ)
耳の下が腫れて熱が出る病気ですね。

それほど怖くない病気の印象ですが、実は合併症があります。

髄膜炎、難聴、精巣炎・卵巣炎などです。

この病気のあとに耳が聞こえなくなったり不妊になる可能性があり怖い病気です。

特効薬はありません。また妊娠初期に感染すると流産の原因にもなります。

 

⑤ インフルエンザ
これは言わずと知れた感染症ですね。

妊婦では重症化のリスクが高くなるため要注意です。

 

⑥ 百日咳
100日もの間、咳が長引き辛い病気のためこの名前がついているそうです。

大人でも咳が止まらず相当苦労する病気です。

日本では乳幼児期に混合ワクチンを接種して予防されていますが、

おおよそ4〜12年ほどで免疫力は低下してしまいます。

怖いのは妊婦さんが百日咳に感染し咳が止まらなくなり妊娠に影響する可能性と、

出産後のお子さんに感染して命に関わる状態になる事です。

しかしこの危険性をワクチンで軽減できる可能性があります。

 

⑦ 新型コロナ
インフルエンザとも似ていますが、咽頭痛、咳嗽などの呼吸器症状のほかに

発熱、倦怠感、関節痛、味覚障害など多彩な症状が報告されています。

発症から1週間ほどしてから肺炎を発症し重篤化するケースがあります。

また感染後の後遺症も報告されており油断大敵な感染症です。

また妊婦は妊娠後期に感染すると重症化しやすいと言われています。

 

ここからは具体的なワクチン接種について説明します。

上記に記した疾患は、程度の差はありますがワクチンにてある程度予防が可能な病気です。

病気になった時に被害が甚大なためワクチンを前向きに検討して頂きたい病気です。

 

生ワクチンに関しては全て「生涯(1歳以上)で計2回」となっています。

病気にかかっているから免疫があると判断するのは危険と言われています。

似たような症状を起こす病気もあるため、ほかの病気だった可能性が否定できないからです。

母子手帳にてしっかり2回接種されている事が確認できれば、それ以上の接種は不要とされています。

もし記録で2回接種が確認できなかった時や血液検査にて抗体価が低いと判断された時はワクチン接種をご検討下さい。

 

しかし、大原則として生ワクチンは妊婦への接種は禁忌とされています。

ですから現在妊娠中の方は上記の生ワクチンと記載されているワクチンは

出産後まで受けることはできません。

授乳婦さんは問題ありません。

※生ワクチン接種後は2ヶ月の避妊が推奨されています

(しかし妊娠中に生ワクチンを接種してしまったケースで何らかの問題が生じた報告はないそうです)。

 

不活化ワクチン・mRNAワクチンは妊娠中でも接種可能です。

インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンは

現在では妊婦さんも積極的に接種を受けていると思います。

 

問題は百日咳のワクチンです。

日本では成人に使用できるワクチンは「トリビック」と言われる

百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチンです。

このワクチンは妊娠中の接種は貼付文章では

“予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合”となっています。

曖昧な言い方ですね。

しかし管長先生や日本プライマリ・ケア連合学会の

ワクチンサイトを見ると“接種をお勧めします”と書いてあります。

妊婦さんでも自分自身やお子さんを守るために積極的に検討されても良いかもしれません。

かかりつけ産科医の意見も伺ってみてください。妊娠前の方や授乳婦さんの接種は全く問題ありません。

 

 

さらにもう一つ大切な事は、その周辺の方々もしっかり免疫力を確保しておくことです。

特に妊婦さんがいる場合、妊婦さんやお子さんを守るためにワクチンを接種し

免疫力を高めておき感染症を持ち込まないようにする努力も必要だと思われます。

以上、長々と記載させて頂きました。管長先生も記載されていましたが、

一番良いのは妊娠する前にしっかり必要な予防接種を済ませておき免疫力を確保しておくことだと思います。

妊娠可能年齢の女性やその周囲の方々は是非一度ご検討いただければ幸いです。

 

 

☆注意☆
今回の内容はワクチン接種を強要するものではありません。

実際に病気にかかることに比べればワクチンのリスクは

低いとは言えますが絶対に安全なものでもありません。

また打ちたくても打てない方もいます。

最終的にはその他の情報も加味してご自身の判断でお決め頂くのが最善と思います。

ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。

 

わかまつ呼吸器内科クリニック

若松俊秀

Illustration by Freepik Storyset

 

 

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